がんセンターでは、緩和ケア専任の担当が置かれています。その背景には、がんの痛みをとるのは簡単なことではないという認識があります。つまり、生半可な意識での取り組みでは効果が限られるのです。がんの激しい痛みに使われるのは、通常のモルヒネなどの医療用麻酔です。痛みの強さや頻度、副作用などに応じて30種類以上を使い分ける事が必要です。実際にはモルヒネを使ってきちんと治療をすれば、80%のがんの痛みは取れることが分かっているのですが、そのこと自体がまだ十分に普及していない、理解がすすんでいないという問題があります。さらに、患者のなかには医療用麻薬では効果が薄く、工夫を凝らさなければいけない例も少なくありません。緩和ケアにおいては、経験から手探りで選ばれる薬が良く使われます。鎮痛補助薬と呼ばれています。その中には、本来痛みとはまったく関係のない薬も多くあります。痙攣を抑える薬・不整脈を抑える薬、さらにうつ病の薬も含まれているのです。痛みとは関係ない薬も経験的に用いる、という「経験頼み」の側面が、緩和ケアの恩恵がなかなか広がらない理由のひとつなのではないでしょうか。